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「猫神探訪」を続けるに当たって

.24 2011 当ブログを読むに当たって comment(3) trackback(0)
~東日本大震災に想う~

はじめに、一言。

今回は、「猫神探訪」の記事は、お休みです。

代わって、いま、少しく筆者の脳裡を往来することごとについて、とりとめもなく書き連ねることで、今後の「猫神探訪」を続けていくことの一種の決意の再確認に充てたいと願っています。その上で、すぐにも「猫神探訪」記事の連載を再開しようとも思っています。

以下は、筆者の独り言のようなものですから、お付き合いいただくのは恐縮極まりないのですが、もしもよろしかったら、御一読下さい。

未熟かつ拙い文と内容に関しましては、この場をお借りして、あらかじめお詫び申し上げます。

*

先日の大地震・大津波以来、被災者の皆さんのことを思うと、やり場のない悲しみと苦しさに襲われる日々を筆者は送っている。我家にも若干の被害は出たが、関東にあってさえ、あまりの大きな揺れに真剣に死を覚悟した自らの情けなさには、今もって苦笑せざるを得ない。そして、実害と云えば、いまのところ家具家財の崩落と計画停電くらいであることに何故か心苦しさを覚えている。

だが、筆者は、夕方から人を家に招いて細々と貧しい生計を立てているため、計画停電によって、おそらく
今月中にも収入を得る道を断たれてしまうことだろう。震災は、思わぬところで自分にも重くのしかかっている。筆者にとって、放射線の問題は、生活の問題ほど逼迫はしていない。毎日、夕刻から停電すれば、口が干上がるのは時間の問題だからだ。にも関わらず、先行きに不安を覚える自分に嫌悪すら感じる、そんな毎日が続いている。これも皮肉な幸せとでも云えば良いのだろうか。

しかし、
そんな自分がまるで被害者には思えない、それほどの惨状を毎日テレビで見なければならない。被災地には、テレビに映るほかにも、零細の仕事をしていた人々、日雇いの人々、ホームレスの人々など、メディアで採り上げてもらえない被災者が沢山いることだろう。社会の弱者は、決して病人や障害者、老人や子供、妊婦だけではない。家族を探す被災者の姿には本当に胸がつまるが、一方で、探してくれる家族すらいない被災者もいるだろうことを考えると、暗澹たる気分に沈んでしまう。本当は、犬や猫などのペットも...と云いたいところだが、現状ではそんな訴えは胸の中にしまっておかねばならないのだろう。

とにかく、早く日常を取り戻さねばならない。

いままでも貧困や困難と戦っていた人々は、分かりやすい救済よりも、実はこの日常を取り戻す、と云う一点の事象に生活がかかっていると云える。もちろん、もはや自力で立ち上がれない被害を受けた人々には迅速に救済の手をさしのべねばならない (云うまでもなく、被災者は全員救済すると云うのが、大前提であるが...) 。しかし、一方で、いまだ立ち上がる余力が残っている人々にとっては、日常が帰ってくれば、貧しいなりの、苦しいなりの生活も取り返せることを多くの人々に忘れないでほしい。それは早ければ早いほどいいのである。買いだめなどに奔走し、いまだ実態の知れぬ放射線汚染に首都圏までパニックする、そんなことで日常を乱すのは、やめねばならぬ。この歳になって初めて、普段の日々、日常の繰り返しが、こんなにも大切なことなのだと云う実感を、いま、噛み締めている。

もちろん、この日常を取り戻すと云うのが、社会の豊かな人々、余力のある人々の日常を優先する形で行なわれてしまうことには、十分な注意が必要だ。日常を取り戻すことを切実に願っている筆者は、熱烈な野球好きでもあるのだが、現時点ではプロ野球の開催など待ち望んではいない。自分勝手かも知れないが、球場に流す電力のほんのわずかでも我家に流してくれれば、筆者は失業しないで済むのだ。もっと切実な事情を抱えている人もきっといるだろう。東京ドームに関しては、そんなことのために二十三区の停電は回避されているのではないと知ってほしい。ただ、今すぐ生活に困るはずのない球団や選手とは別に、その周辺で生計を立てている人々だけは心配である。東電の一層の努力に期待したい。

自粛ムードが広がれば、経済の復興が停滞すると云う考えには、筆者も概ね賛同する。ただし、平穏な日常を取り戻すことと、贅沢三昧の能天気な消費社会を急ピッチで再現することを、経済の復興と云う美名のもとで混同する考えには断じて与することが出来ない。自粛はただの道義的な手段で偽善的だと考えている人々は、こっちでどんちゃん騒ぎをすれば、家も無く、ライフラインも復旧せず、いまだテレビすら見られない多くの人々に「元気をあげられる」と思っているのだろうか。

被災地の人々にとって本当の試練が来るのはこれからである。だのに、そんなにも独りよがりで、思い上がった励ましなんか今は不要であろう。現在、被災者のために何かしたいと願う人は多いはずである。そして、そう思うのであるならば、非力な我々が、一人一人出来ることで、この先いよいよ重要になることの一つは、実はこの大災禍の被害を風化させないことなのだ、と云うことも忘れないでいたい。励まし、などと烏滸がましいことは云いたくない。ただ、記憶を風化させてしまったら、実体的な援助も来なくなることだけは疑いの余地がない。

薄っぺらな同情を深淵とするからっぽの道徳論としての自粛は、無駄であるだけでなく、確かに有害でさえあると思う。ただ、道義的な自粛がすべて害悪だとは断じて思わない。人は、苦難から立ち上がるとき、気遣いを必要とするときもあるからだ。そう云った意味で、自粛も時と場合、あるいはその内容によって、被災地に向けた重要なメッセージになることを忘れてはならない。忘れられていない、と伝え続けること、しかも露骨な言葉を通してではなく、日常の小さな行いの端々で暗黙のうちに伝え続けることは、意外と難しい。しかし、だからこそ、その努力を惜しんではならないのである。それは援助と呼ぶにはあまりにも微細で、あまりにも弱々しいが、それでも希望の灯火をつなぐ、万分の一の火花くらいにはなるはずである。

プロ野球開幕の話は、あまりにお粗末な話題なので、ここでは上に述べた以上にはもう触れないが、テレビ番組の内容にはやはり触れておきたい。今まで、何となく、あの馬鹿げた空騒ぎのような番組造りを楽しんできた人々の中にも、今、改めてその下らなさに、百年の恋も覚める思いをしている人々は多いのではないだろうか。娯楽も、笑いも、健全な社会には必要だろう。無駄や遊びこそが文明を生み出す原動力であるとは、何もホイジンガやカイヨワ、バタイユなどを引き合いに出さずとも、筆者を含めて、現代文化を享受してきた多くの人々には、もはや自明のこととして実感出来ることだろう。

しかし、今、われらの社会は健全な状態にあると云えるだろうか? 抽象的な水掛け論を展開しているのではなく、単に現実的に、物理的な次元において、このように問いかけたい。経済復興を盾に取って、自分たちの安逸な生活の拙速な復旧を、被災地への気遣いとすり替えるようなことは、何としても避けてほしい。ネットやその他の場所で、地震の所為で秋葉原に行けない、などの苦情を飛び交わせている人々の考えを筆者が肯定出来ないのは、筆者があまりにも了見が狭いからなのだろうか。そして、もしそうだと云うのならば、逆に、そう云うことを云っている人々は了見が広いとでも云うのだろうか?

テレビのお笑いなども、同列の愚を犯さない
よう注意してほしい。お笑いをなくせ、と云っているのではない。ただ、お笑いを文化だと云うならば、震災前までの安楽な社会には能天気な馬鹿騒ぎが適合していたとしても、この時期にはこの時期に適した笑いがあるはずだと云いたいだけである。そのようなものを創出するのも、笑いと云う文化を担う人々の使命なのではないか。そもそも、最近のお笑いは、そろそろ手垢がつき過ぎてマンネリの度を極めた感が否めない。この業界では、斬新、と云う言葉さえ使い古され、もはや陳腐とさえ呼びたくないほどの物事を、後生大事に修飾する形容辞に堕している気がしてならない。

笑いが被災地に元気を与えるなどと、高みから机上の空論を叩く前に、現在の危機を、旧弊から脱するための天与の好機だと捉え、旧態依然とした安易な番組造りに胡座をかくのではなく、新たな笑いを生み出す努力をする気概を関係者には持ってほしい。被災地の人々だって、わざわざテレビ局様に与えられなくたって、笑いや笑顔など諸々の喜びくらい、自分たちで少しずつ取り戻していくはずである。それを共に盛り上げていく笑いや娯楽と、そのような気持ちを逆なでする笑いと娯楽とでは大きな違いがあるのだから、それらを峻別する開拓者精神をテレビ関係者にはお願い出来ないものだろうか。

かつて
巨匠ルキノ・ヴィスコンティは、自らの映画の中で、登場人物に、「何も変わらないためには、すべてが変わり続けなければならない」と云わせしめたが、刻々と変化する外界の情勢に対して、変わらぬ日常を維持すると云うのは、まさにこのようなことなのである。未曾有の災害と云う国家的な危機の中で、今まで通り何も変えないことが日常を取り戻すための営為だと云うならば、それはそのように主張する人々の傲慢な怠惰であり、何よりも、何もかもが変わってしまった被災者たちを無視する発想である。

もちろん、これは一つ娯楽のことだけでなく、国家経済に関しても全く同様のことが云えるはずである。セルヴァンテスは、社会に適合出来ない時代遅れの少数者としてドン・キホーテを描くことで、返って当時の社会を痛烈に風刺したが、もしもわれらの社会にあって、主流を自認する恵まれた多数者たちが、現在の危機的な社会情勢を的確に認識することを怠って、過去の繁栄にしがみついたとしたならば、誰がそれを時代遅れとして誹るのだろうか?

*

何だか、書くまいと思っていた愚痴になってしまった。いまさら詫びても詮無いことながら、それでもお詫びを申し上げて、話を唐突な結びへと導こう。


とにかく、筆者が最も強調したかったのは、日常を取り戻すことであった。今回は、とにかく、そんな気持ちでこのブログも更新することにしたのである。決して、不真面目に、被災地の現状に目を背けて、下らぬ「猫神」の民俗の記事を書き続けているのではない、そんな言い訳を一応はしたかったのである。そして、その取り戻そうとする日常の延長線上に、筆者や、多くの人々の生計の灯火が再点灯することが願われるのだ。

次回の記事は、明日か明後日にはアップロードしたいと思っている。内容は「長野県の猫神探訪」の続きである。訪問するのは、「塩尻市上西条」の「常光寺」、目指すは、この寺の境内のどこかにある「唐猫」の石碑である。

頑張ろう、みんな!!




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comment

タッキー
『下らぬ「猫神」の民俗の記事』などとは考えないで頂きたいと思います。

なぜなら
といいますか、震災のことを絡めては失礼になるかも知れませんが、それは忘れ去られそうになっているモノに光を当てて、後世に残る作業だからです。

ましてや今春は東北地方を中心に、未曾有の大災害を受け、多くの地域が被害を受けました。

人の命や財産はもちろんのこと、歴史的な遺産・民俗史などまでもが波にさらわれ、原子力発電所の事故により近づくことすらできなくなっている原状・・・

確かに猫神様では腹は膨れないかも知れませんが、もしかしたら一刻を争う事なのかも知れません・・・などと書くと大げさかも知れませんが、このブログに書かれたことが、後世に必要とする誰かが現れるのではないでしょうか・・・。

そんな訳で、陰ながら応援しております(と言っても何もできませんが・・・^^;)
いよいよ伊那谷の猫神様が登場しましたね、我が町の猫神様が登場するのを楽しみに待っております。

梅雨明けが待ち遠しい今日この頃ですが、梅雨の雲の切れ間から覗く青い空は、すでに夏の装い、今年も暑い夏がやってきますね。
ご自愛なさり、ますますのご清祥を祈念いたします。

長文失礼いたしました。
2011.06.23 19:15
clubey
タッキーさん、温かい、そして有り難いお言葉有り難うございます。

今度の津波では、実は幾多の猫神さまが行方知れずになっています。もちろん、被災した人々のことを考えると猫神の心配をしている場合ではないのですが、百年、二百年昔の人々が、自らの生活の思いを刻んだささやかな遺物が、既に人々の忘却の中、永の年月、路傍に佇んでいたものを、今度は真の忘却の闇の中に消えてしまうのか、と思うと悲しみが湧いて参ります。

猫神はよしとしても、同じように、そこに生活していた人々の生きた証が、震災によって潰滅させられたかに見える今、復興の美名の下で、さらに完膚なきまでに消し去られることを心配しています。

メディアには当然登場しませんが、政財界の人々や、一流サラリーマンを自称する人々の中には、地元を離れようとしない被災者を陰ながら「バカ」と罵っている人たちが多くいます。「島国根性」だの「田舎者」だの云う語彙も飛び交っています。復興に当たっては、地元の小資本など気にしていては大資本を誘致出来ない、とか、地方に仕事がないと云ったって、地方の人間は馬鹿で使えないから仕事を創出することが出来ない、などの言説も、よく聞きます。

被災地に限らないことですが、このような歪んだエリート主義をもう一度見直すためにも、そして一つ一つの地域、そこに生きる人々の生活や職業が、どれ一つ欠けても社会は成り立たないと云うことを再認識するためにも、多くの人々が改めて自らの足下を見つめ直すことが今求められている気がします。もちろん、私も含めて。

「猫神」を巡る探究が、私にとって、そんな営為の一部となることを願っています。
2011.06.24 13:31
-
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2011.10.07 15:57

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