スポンサーサイト

.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

千葉県の猫神・台の山の猫踊り (1)

.03 2010 関東地方 comment(1) trackback(0)
台の山
八千代市保品

現在、「もえぎ野」と云う新生キメラ名で、大々的な宅地造成を進めている地域一帯が、かつて「下総國・東葛飾郡・保品村」と云った頃、集落は「印旛沼」を南に見渡す平かな緑の台地にあった。いまも、県道4号・千葉竜ヶ崎線を南下して県道263号・けやき大通りに入ると、道はゆるやかに「保品」の台地を迂回するかのように取り巻きつつ、何度か高度を上げたり下げたりしていくことから、そこが台地であるのが分かる。現在の地名は、「八千代市保品」になっており、地域の南側全体を大きなゴルフ場に占拠され、残された東北部の丘の中に、「少年自然の家」を営んでいる、そんな集落である。近年は、北西部に「もえぎ野」団地と「東京成徳大学」のキャンパスも誘致して、かつての谷津と田園に囲まれた風景は、見る影すらなくなっている。

現代の地図で見ると「保品」の地は、一見「印旛沼」から離れて見えるが、よくよく観察すると、集落の北にある「阿宗橋」から南の川道には「印旛沼」と表記されていることに気づく。そもそも橋より北の「新川」自体が、名前の示すように人工的に造られた放水路で、本来の自然河川は、その脇に流れる「岩戸川」や「神崎川」だったのである。「阿宗橋」から南の「印旛沼」は、この二世紀の間の度重なる干拓によってすっかり痩せ細り、いまでは川の一部のようにしか見えなくなってしまっているに過ぎない。

要するに、二百年ほど遡れば、「保品」の台地は「印旛沼」の西北端に突き出た岬だったのである。それは、近在のどこから見ても「台」であり、集落を抜けた台地の頂上部は、まさしく「台の山」だったに違いない。今では誰も分からなくなりつつあるが、古い小字名で云うと、集落の集まった「郷」の南側が「台の畑」で、そのさらに南が「台の平」である。今回紹介する言い伝えの中の「台の山」とは、この「台の平」の辺りのことと推測される。

*

ここらで、話そのものを紹介することとしよう。

昔、家で八郎っていう名前の猫を飼っていたんですよ。その時わしら家では村役人やっていたんで、藩の用事で神崎を渡って佐倉さ行ったんだなあ、その帰りのこと保品 (八千代市) の台の山ん中でのことだ。なんやら猫の鳴き声がするんで八郎だったら笛さ吹いてみといったら、熱い小豆粥食べさせられて口が火傷して吹けねといったというんだなあ。不思議なことがあんなと家へ大急ぎで帰って、家のもんに山ん中であったこと話したら、小正月 (一月十五日) だったもんで猫に小豆粥を食べさせたというんですよ。 (中略) 八千代にもこれに似た話がある。
(武西 七五歳 男)

印西町史編纂委員会/編 (1996) 『印西町史 民俗篇』印西町、p. 669

難しい話は抜きにして、この説話の面白いところは、何と云っても猫に名前があり、しかもそれが単なる人間の名前のように無造作なものだと云うことであろう。その上、この説話は、「千葉県」の他の「猫の集会」説話が、通例、飼主と猫の名前は同じで、「~左衛門 」「~兵衛」「~どん」としているのにも当てはまらない。また「八郎」と云う名前は、およそ名主や村役人のような地位のある本百姓の当主名には相応しくないため、おそらくこれは猫だけの名前であろうと思われる点でも、他の説話と異なる。さらには、何の設定もなしに、自分の飼い猫なら笛を吹いてみろ、と云っているひどく不自然なことを、さも自然に言い放っている点なども可笑しい。飼主と猫が直接会話しているのも、この説話ならではの展開である。

「千葉」の「猫の集会」説話を代表する「勘解由どんの猫」では、主人公自身が笛吹きを得意としているし、旧「海上町」 (現・旭市) の同様の説話の主人公は「笛吹き通右衛門」とさえ云うのである。その他の「猫の集会」説話でも、宴会か踊りの場か、何かしら笛を吹く必然性のある舞台設定が施されているのだが、「台の山」の話だけは、そんな設定もなく、笛の話の登場の仕方がいかにも唐突なのである。

これらのことを総合すると、この「台の山の猫踊り」の説話は、他のものよりも後発的なもので、比較的後代に成立したものなのではないかと推測出来る。もちろん、断片的な説話の方が後発的だと決めつけることが出来ないのは分かっている。筋の綺麗に通り過ぎた説話は、後の時代に作為的に整えられた結果、生まれることも多いからである。ただし、この「台の山の猫踊り」の断片性は、どう考えても可逆性のないものなので、こちらが後発的に発生していることは、ほぼ確定出来るだろう。何しろ、猫が笛を吹くと云うモチーフが、単独で、しかも先行して生まれたとは考えにくい。

ある種の説話群のうち、どの説話が他のどの話よりも先に出来たとか、後に出来たと云うことがはっきりと分かると云うのはあまりないことなので、それだけでも、筆者にとってこの言い伝えは興味深いものとなっている。

とは云え、この説話の最も興味深い点は、こんなことにはない。
このことについては、次回の記事で...。

地図は、この辺...



スポンサーサイト

comment

庭のねこ
山の中という不気味になりそうなシチュエーションですが、笛を吹いてみろというのが確かに唐突で、陽気で、おもしろいですね。
八郎は他の猫たちと踊っていたのでしょうか。
思わず、笛を吹いたり、歌ったりしながら踊る、元気な猫たちの姿を想像してしまいます。
もし、隠れてそんなことをしているのなら、こっそり見てみたいものです。
2010.04.05 00:18

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://nekonokamisama.blog3.fc2.com/tb.php/7-565e0236

プロフィール

clubey

Author:clubey
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。